墨象作家 1947年 沖縄に生れる
1975年 第1回個展フランス・パリ(墨象)
1968年~1981年 68年東京展、71年毎日展、79年玄美展玄美賞受賞、その他
1983年~ 美術展(平面部門)抽象水墨で出品
1983年 スペイン美術賞展初出品
1984年 ホアン・ミロ国際ドローイング展
1985年 神奈川県展芸術公論賞受賞
1985年 ポーランド文化省主催平和国際青年美術展(日本代表出品)
1986年 トロント国際ミニアチュールアート展
1986年 個展1.80×40mの作品(県民アートギャラリー)
1986年 墨のパフォーマンス3×100m(大道小学校校庭)
18年前ある展示会のオープニングパーティーで、ジャズの音楽に合わせ奇妙な踊りを踊っている人物がいた。それが伊江隆人(いえりゅうじん)との最初の出会いである。その後、彼の墨象絵画を見た時、一瞬一瞬の墨との格闘によりあの身体表現が、出てきたのだと理解できた。
伊江氏は、直感的で身体的な作家である。そして、「珊瑚礁」「あかばな」「森の仲間達」シリーズ、最近のインスタレーションなど一貫して自然のあり方や大切さを表現している。最初の「珊瑚礁」シリーズは、 珊瑚礁という漢字を珊瑚の質感で画面一杯に描かれているものだが、墨の濃淡の間から今にも魚が飛び出して来そうな気配がある。見方を変えると抽象的でオールオーバーな画面は、深遠でとても力強い。墨象であり具象にも抽象にも見えるこの時期の作品は、復帰直前のウチナーンチュの心の状況を琉歌と重ね合わせ表現したらしく、伊江氏の思いがひしひしと伝わってくる作品が多い。また伊江氏は、素材に対する研究も欠かさない。自分で筆を作り、紙を漉き、墨を作る(豚のほほの部分からニカワをつくり、油が燃えたすすと混ぜる)。額縁も全部手作りで作品を完成させる。その研究は、職人的である。実際、最近の伊江氏の仕事に、店の内装を手がけるというのがある。一人でプラニングをたて、自然素材を使い全て自らの手で制作するのだ。まさに日常の中で伊江ワールドの空間が体験できるのだ。これは、これからのアーチストの美術表現のさきがけになっていると思う。現代美術の動向に左右されないエコロジカルアーチスト伊江氏の今後の仕事は「おもろそうし」の研究、沖縄の独自の文字を発見し、
それらを作品の中 に取り入れ自然を表現する事だという。
伊江氏のこれからも墨にこだわり、カルコグラフィーの枠を超えた作品ができるのを楽しみにしている。